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人は夜になると弱くなる? 夜間災害にひそむ心理と安全対策のヒント

夜中に地震が起きたら…あなたはすぐに動けますか?

布団の中、真っ暗な部屋、鳴り響く警報音。

頭はまだ寝ぼけていて、何をすればいいのかすぐには思いつかない。

そんな状況を想像して、少し不安になった方もいるかもしれません。
反応が遅れたり、判断が鈍るのは、意志が弱いからではありません。

それはむしろ、人間の脳の仕組みがもたらす“自然な反応”とも言えるのです。

目次[非表示]

  1. 1.夜間災害の難しさは「不利な条件」が重なること
  2. 2.夜間に起きやすい心理的バイアス
  3. 3.夜間だからこそ起きる人の行動特性
  4. 4.夜間を想定した訓練設計と講評のヒント
    1. 4.1.なぜ夜間訓練が必要なのか?
    2. 4.2.講評で問いかけたい視点
  5. 5.夜は人を「人間らしく」する時間
  6. 6.判断と記憶が曖昧になる夜こそ「記録」が力になる

夜間災害の難しさは「不利な条件」が重なること

災害は、私たちの都合を考えてはくれません。
特に夜間は、次のような“行動を妨げる要因”が重なります。

睡眠中で意識がはっきりしない
 → 判断スピードが落ちやすく、動き出しに時間がかかる

視界が悪い/停電の可能性がある
 → 情報収集が困難になり、思考の幅が狭まる

周囲も静か/誰の動きも見えない
 → 他人の行動を参考にしづらく、不安や孤立感が増す

こうした状況では、人は無意識のうちに「自分を守るための心のバリア」を張ろうとします。
これが、心理的バイアスです。

夜間に起きやすい心理的バイアス

災害時には、特に次のような心理的バイアスが強く表れます。
夜間はその影響がさらに大きくなる傾向があります。

正常性バイアス:「まぁ大丈夫だろう」
 → 脳が“不都合な情報”を無意識にスルーし、平常を保とうとします。

回想バイアス:「前も何も起きなかったし」
 → 過去の経験が、今の判断を曇らせてしまうことがあります。

傍観者効果:「誰かがなんとかするだろう」
 → 周囲の反応が見えない夜間では、“動かない選択”が正解に思えてしまうことも。

ピークエンドの法則:「最後が平和なら全体もOKだった気がしてしまう」
 → 訓練や避難行動を「結果オーライ」で終わらせてしまい、危機の瞬間を軽視しがちです。

夜間だからこそ起きる人の行動特性

上記のような心理的バイアスに加え、夜間という時間帯には、人間ならではの身体的・認知的な特性も関わってきます。

判断力の低下
 → 脳が覚醒していない状態では、情報処理に時間がかかる

視野の狭まり
 → 暗さや閉塞感が不安を増幅させ、冷静な行動を妨げる

反応時間の遅れ
 → 睡眠中は筋肉の反応も鈍り、行動が遅れがちになる

恐怖や混乱により、周囲の行動(社会的証明)に過度に依存する
 → 自分の判断より「誰かがやっているなら大丈夫」という思考に偏りやすい

こうした“夜特有の行動傾向”は、日中の訓練ではなかなか再現しにくいため、講評や訓練設計での意識的な組み込みが求められます。

夜間を想定した訓練設計と講評のヒント

なぜ夜間訓練が必要なのか?

実際の災害は、時間を選びません。
夜中の2時に地震が来るかもしれません。
そんなとき、「明るい会議室でシナリオ訓練をした記憶」は、あまり役に立ちません。

夜間設定の避難訓練には、次のような意義があります。

  • 視界・音・温度などを“演出”して臨場感を再現できる
  • 暗さや不安の中で“何に頼るのか”を参加者自身が体感できる
  • 「判断しづらい状況」をあえて経験することで、対応力を磨ける

たとえば、照明を落とした体育館で、懐中電灯だけを手に訓練をしてみる。
一部の情報を伏せた状態で行動を促す。
それだけで、“頭ではわかっていたはずのこと”が、ぐっと現実味を帯びてきます。

講評で問いかけたい視点

夜間訓練の講評では、「なぜ動けなかったか」よりも、「どこで迷ったか」「何を手がかりに行動したか」を問うようにしてみてください。

  • どの瞬間に判断をためらったか?
  • 誰かの動きを見て安心したか?
  • どこに注意が向いて、何が見えていなかったか?

このような問いかけは、参加者自身が「自分の中にある行動パターン」に気づくきっかけになります。

夜は人を「人間らしく」する時間

夜は、人を最も「人間らしく」します。

眠りたい、怖い、面倒くさい、誰かに頼りたい——
そんな感情が、ふだんよりもずっと強く現れます。

でもそれは、弱さではありません。
人間としてごく自然な反応なのです。

だからこそ、備えが必要です。
そして、“夜を想定した訓練”と“正しく振り返る習慣”が、いざという時の行動をきっと支えてくれます。

判断と記憶が曖昧になる夜こそ「記録」が力になる

夜間の対応は、とにかく記憶があいまいになりがちです。

「自分がどう動いたのか」「なぜそうしたのか」を、あとから思い出そうとしても、断片的だったり、感覚的だったりして、正確な振り返りが難しいのが実情です。

そんなときに役立つのが、避難所運営支援アプリ「N-HOPS」です。

N-HOPSは、

  • 現場での判断や行動を独自の支援ガイドで表示
  • 訓練講評や次回計画へのフィードバックを踏まえて自由な編集が可能

といった機能を備えており、「夜の曖昧さ」を補うための心強いツールです。

特に、個人では気づけなかった判断パターンや、チーム内の動きのズレを可視化できる点が大きな特徴です。 

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淺野 智雄
淺野 智雄
能美防災 総合企画室 社内ベンチャーグループ長。自治体や地域に寄り添う防災のあり方を模索し、避難所運営支援アプリ「N-HOPS」をはじめ、現場の声に応じた防災支援ツールの開発・展開に取り組んでいる。元々は品質管理の現場からキャリアをスタートし、その後は中長期ビジョンの策定や新規事業開発など、経営と現場をつなぐ活動に従事。実際の運用現場に足を運び、改善を重ねる日々を大切にしている。趣味は筋トレと読書、料理。どんな状況でも前向きでいられるよう、朝4時からのトレーニングで心身を整えるのが日課。
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