
避難所の訓練で共助を浸透させるには?自治体担当者も知りたい3つの工夫
避難所開設訓練に取り組む中で、「住民同士の助け合い(共助)をどう根付かせていけばいいのか」と、試行錯誤されている自治体の担当者の方も多いのではないでしょうか。
共助の必要性は理解されていても、いざ訓練や地域活動の場面になると、なかなか実感を得られなかったり、継続的な関わりが難しかったり——。日々の業務の中で、そうした悩みに直面される方も少なくありません。
この記事では、避難所開設訓練を通じて共助の芽を育てていくための工夫を、無理のない形で3つの視点からご紹介します。
すでに取り組まれている内容もあるかもしれませんが、少しでもヒントになれば幸いです。
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共助は、なぜ難しいのか
共助の意義を改めて
「共助」とは、地域の中で住民同士が支え合う防災の考え方です。
災害時には、行政の対応が一時的に手薄になることも想定されるため、地域の力でできることを日ごろから準備しておくことが大切です。
特に避難所では、「誰が何を判断し、どう動くか」をあらかじめ共有しておくことで、混乱を最小限に抑えることができます。
浸透が難しい背景
共助の考え方は広く理解されている一方で、実際に地域の中で根づかせていくのは容易ではありません。たとえば、
- 高齢者や障がい者、子育て世帯など多様な立場をどう調整するか
- 地域によっては住民同士の交流が限られている
- 忙しい日常の中で訓練に参加する時間が取りづらい
といった現実的な課題があります。
私たちが関わる中でも、「どうすれば共助が自然に根づくか」と悩まれている担当者の声をよく耳にします。地域の事情に合わせて、一歩ずつ取り組まれている姿勢に、学ばせていただくことが多くあります。
避難所開設訓練で目にする課題
避難所開設訓練は、自主防災組織や施設管理者、地域の関係者が中心となって実施されていますが、以下のような課題が挙げられます。
- 年に一度の訓練が形骸化しやすい
- 「やらされ感」になり、住民の巻き込みが難しい
- 実践的な知識や判断力に不安が残る
- 他団体や住民との連携が限定的になりがち
- 同じ形式が続き、新しい気づきや役割体験が得にくい
こうした課題は多くの地域で共有されており、工夫次第で少しずつ乗り越えていけるものでもあります。
共助を少しずつ育てる3つの工夫
その① 実践に近づける「体験型の研修・訓練」
座学だけでは伝わりにくいことも、実際の行動に近い体験を通じて理解が深まります。
たとえば、以下のような体験型訓練を取り入れる自治体も増えています。
- 受付・誘導・避難者対応を交代で体験する
- チェックリストに沿って模擬開設を行う
- 要配慮者の移動や生活を想定したロールプレイ
こうした取り組みは、役割を「自分ごと」として捉えるきっかけになり、共助の理解にもつながります。
その② 日常に防災を溶け込ませるコミュニケーションの工夫
「共助」は、日頃のつながりの中で少しずつ育まれていくものです。
訓練だけでなく、地域のイベントや学校、SNSなどの身近な場を活用して、防災を“日常の話題”にしていく工夫が有効です。
- 防災ミニゲーム・クイズ大会
- 小学校と連携した防災学習(→ 家庭への波及)
- 地域LINEグループでの平時の情報交換
こうした場づくりが、いざという時の「声かけ」や「助け合い」につながっていきます。
その③ 参加しやすい工夫を取り入れる
訓練の参加ハードルを下げることも、共助の第一歩。ライフスタイルに合わせた柔軟な設計が重要です。
- 平日だけでなく夜間や休日の開催
- 短時間型やオンライン型の説明会
- 参加特典や認定証の発行によるモチベーション付け
「できる範囲で関われる」仕組みを整えることで、継続的な参加やリーダー育成にもつながります。
地域の成功事例から学ぶ:子どもを起点にした共助づくり
ある自治体では、地域の小学校と連携して防災教室を実施したところ、子どもが家で防災の話題を出すようになりました。
その結果、保護者や近隣住民の参加意識も高まり、家族単位で避難所訓練に参加する流れが生まれたそうです。
「子どもをきっかけに、家庭や地域へ防災意識が広がっていく」
そんな成功の連鎖が、共助を根づかせるヒントになるかもしれません。
まとめ:共助を仕組みで支えることが鍵
共助は理念だけでなく、日々の関係性と実践の積み重ねの中で育まれるものです。
避難所開設訓練は、その“きっかけ”をつくる貴重な機会でもあります。
現場を担う防災担当者のみなさまのご負担を少しでも軽減しながら、住民が安心して関われる環境づくりを、これからも共に考えていけたらと思います。