マニュアルだけでは不安?アクションカードの可能性と次に備えるための視点

マニュアルだけでは不安?アクションカードの可能性と次に備えるための視点

避難所運営マニュアルはしっかり整備されている。でも現場では、「これ、いま読む余裕ある?」「どこに置いてあったっけ?」と訓練に参加した住民から言われてしまった——そんな経験のある防災担当者の方も多いのではないでしょうか。

実際、初動時には“読むより、動く”ことが優先される状況が多く、分厚いマニュアルをその場で開く余裕はなかなかありません。

その課題を補う手法として、近年注目されているのが「アクションカード」です。

目次[非表示]

  1. 1.アクションカードって何?その背景と広がり
  2. 2.「アクションカードを作れば安心」は本当か?現場で浮かび上がった課題
  3. 3.どうすればもっと柔軟に、もっと使いやすくなるのか?
  4. 4.デジタル化が目指すのは、“迷わず動ける避難所”の実現
  5. 5.まとめ


アクションカードって何?その背景と広がり

アクションカードは、「今ここで、この役割の人が何をすればいいか」が一目でわかるように設計された、役割別の行動支援ツールです。

もともとは、病院の災害対応(BCP)支援を目的に生まれた手法で、医療現場のスタッフが初動対応を迷わず行えるように開発されたもの。その後、避難所運営や地域防災、企業のBCPへと広がっていきました。

たとえば:

  • 受付係:最初にやるべき声かけ、記録の仕方
  • 物資担当:配布のルールや整理方法
  • 誘導係:避難者の導線確保、車椅子対応時の注意点

こうしたカードを現場に置いておけば、マニュアルを読まなくても初動がスムーズになる、というわけです。

アクションカード

「アクションカードを作れば安心」は本当か?現場で浮かび上がった課題

とはいえ、アクションカードにも課題があります。

現場の防災訓練で実際に運用してみると、以下のような悩みが見えてきます。

  • 内容を直したくても印刷し直しになる(更新性の弱さ)
  • 現地のどこに置いてあるかわからない(アクセス性の低さ)
  • 現場で足りないことに気づいても反映が難しい(フィードバックが仕組みに入らない)

つまり、“一度つくったら完成”ではないことが、実運用の中で明らかになってきたのです。

どうすればもっと柔軟に、もっと使いやすくなるのか?

そこで今、注目されているのが「アクション支援のデジタル化」です。

  • カードの内容をリアルタイムで更新できる
  • スマートフォンやタブレットで、誰でもすぐにアクセスできる
  • 訓練で得た学びや改善点をそのまま反映できる

こうした仕組みがあれば、紙のカードでは難しかった「つなぐ」「変える」「進化させる」ことが可能になります。

避難所のデジタル化

デジタル化が目指すのは、“迷わず動ける避難所”の実現

ここで大事なのは、「紙とデジタル、どちらが正しいか」ではなく、“今の現場にとって、どちらが柔軟で続けやすいか”という視点です。

災害は毎回異なります。マニュアルもカードも、「いつもと違う」ことにどこまで対応できるかが問われています。

いざという時に、「誰が来ても、迷わず動ける」そんな避難所をつくるために、次の備えのかたちを一緒に考えてみませんか?


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まとめ

  • マニュアルはあるけど、現場ではすぐに動けない
  • アクションカードは、行動支援の工夫として効果的
  • でも、更新やアクセスには課題が残る
  • デジタル化によって「共有」「更新」「実行」が一体化すれば、もっと使いやすくなる

避難所運営に関わるすべての人が、状況に応じて、“自分で判断して動ける”ための仕組み。そのヒントは、「アクションカードの考え方を進化させること」にあるのかもしれません。

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淺野 智雄
淺野 智雄
能美防災 総合企画室 社内ベンチャーグループ長。自治体や地域に寄り添う防災のあり方を模索し、避難所運営支援アプリ「NHOPS」をはじめ、現場の声に応じた防災支援ツールの開発・展開に取り組んでいる。元々は品質管理の現場からキャリアをスタートし、その後は中長期ビジョンの策定や新規事業開発など、経営と現場をつなぐ活動に従事。2025年度からは社内ベンチャーの責任者として、企画・設計から営業・導入支援まで一貫して対応。自治体の防災担当者が「これなら使える」と感じてもらえるよう、実際の運用現場に足を運び、改善を重ねる日々を大切にしている。趣味は筋トレと読書、料理。どんな状況でも前向きでいられるよう、朝4時からのトレーニングで心身を整えるのが日課。