
あなたの自治体も対象に?国の20兆円計画で変わる避難所防災
全国の自治体にとって、いま避難所の在り方を見直す絶好のタイミングが訪れています。
政府は、2026年から2030年にかけて最大20兆円規模の防災・減災投資を予定しており、その重点分野のひとつが「地域防災力の強化」、とくに避難所の環境整備や運営体制の見直しです。
この記事では、「第1次国土強靱化実施中期計画」の内容を起点に、避難所運営の課題とDXによる対応の可能性を探ります。
国土強靱化計画が“次の5年間”に向け再始動
政府は2026年から2030年の5年間にわたって、最大20兆円規模の防災・減災投資を行う方針を打ち出しました。
これは内閣府が発表した「第1次国土強靱化実施中期計画」に基づくもので、防災・減災、国土強靱化基本法における初の“法定中期計画”として位置づけられています。
過去の3か年・5か年計画で培われた取り組みをさらに加速し、抜本的な体制強化と技術導入を進める動きが本格化します。
注目の重点施策:「地域防災力の強化」
中期計画では、「推進が特に必要となる施策」として5つの柱が掲げられています。そのひとつが、地域防災力の一層の強化です。
特に避難所に関しては、次のような取り組みが明記されています:
- スフィア基準等を踏まえた避難所環境の抜本的改善
- 学校施設(避難所想定)の耐災害性強化
- エネルギー自立型の再生可能電源・給水整備
- 支援物資の分散備蓄と安定供給体制の確保
- NPO・ボランティアによる支援活動の推進
つまり、避難所はもはや「災害時の一時避難空間」ではなく、生活支援と共助の拠点として強化されようとしています。
防災DXも推進中。デジタル新技術の柱立て
この計画では「デジタル等新技術の活用」も明確に独立した施策として位置づけられています。
以下のような分野での技術導入が示されています:
- 衛星データ・ドローン・AIによる災害リスク把握と初動支援
- 複数手段による災害情報伝達(高齢者・外国人配慮)
- マイナンバーカード等を活用した避難者情報の管理・効率化
- 自治体における受援体制(受け入れ・連携)の構築
これらは防災現場の効率化だけでなく、人手が不足する中でも確実に災害対応を行う“仕組み化”として注目されています。
現状の避難所向けDXソリューションは?
いかがでしょうか?避難所におけるデジタル活用の可能性は、こうして見ると決して未来の話ではなく、すでに一部では現実のものとなっています。
実際、多くの自治体ではこれまでにマニュアルを整備し、避難訓練を積み重ねることで防災体制の土台を築いてきたのではないでしょうか?
全国の自治体や民間企業による防災DXの導入も、徐々に始まりつつあります。避難所をめぐる主要な技術には、次のようなものがあります:
- 避難者の受付・在所管理のデジタル化:QRコードやLINEによる登録・確認アプリの活用
- 混雑状況の可視化・分散誘導:避難所内の人流データをMAP表示し、別施設への誘導を促す
- 備蓄管理のクラウド対応:複数拠点での在庫台帳共有と更新が可能に
- 多言語・音声対応の簡易掲示システム:外国人住民や高齢者にも伝わる情報配信
- 非常用電源・通信の確保:太陽光発電+蓄電池+Wi-Fiのセット導入事例も
- ただし、避難所の実際の運営(誰が、何を、いつするか)を支援するツールは依然として少数です。
私たちが現場の訓練に参加した際にお聞きする話では、「マニュアルはあっても読まれない」「アクションカードは更新・共有が難しい」といった声も多くあります。
そんな中、現場で使える“行動支援型”の防災DXこそが、次に求められるのかもしれませんね。
まとめ:いま、避難所DXを進める意味
- 政府は2026〜2030年の5年間に最大20兆円を投じ、防災・減災の体制を刷新しようとしている
- 「地域防災力の強化」の柱では避難所が重点対象となり、環境・物資・運営体制の見直しが本格化
- デジタル技術の導入も不可欠となっており、単なる効率化ではなく“災害対応の仕組み化”として期待されている
特に、地方の中小規模自治体では「限られた人手でどう効果的に運営するか」という課題に直面していることも多いのではないでしょうか。
防災DXの導入は、そうした現場における負担軽減や属人化の解消にもつながる可能性があります。
いまが、避難所DXの構想を具体化するチャンスです。