
現場から考える避難所のリアル #8|防災訓練で感じた「情報の見えなさ」
この記事は、地域の避難訓練に参加させていただいた現場での体験をもとに記しています。
訓練の中で見えてきた「情報の見え方・使われ方」について、現場に関わる皆さんと共有できたらと思います。
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はじめに──避難訓練の現場で感じた小さな気づき
これは、ある自治体の協力のもと、地域の避難訓練に参加させていただいた際の体験から感じたことです。
これまでにいくつかの訓練に立ち会う機会がありましたが、そのたびに感じるのは、現場では「情報があるだけ」ではなかなか機能しづらいという現実です。
今回参加した訓練では、住民の方々が避難所に備えられた資器材──たとえば災害用トイレや煮炊き用バーナーなど──を実際に使ってみる場面がありました。
最初は防災担当の方が丁寧に説明しながら進めていましたが、その後、実際の災害時を想定して、住民の方だけで作業を行う段階に入りました。
説明書があっても、つい手が動いてしまう現場
資器材のそばには取扱説明書がしっかり備え付けられていました。
それでも、いざ「自分たちでやってみましょう」となると、多くの方がまず説明書を読む前に手を動かし始めてしまったのです。
誰かが組み立て始め、それを見た周囲の方が「こうするんだろう」と真似をする。
途中でうまくいかなくなると、「あれ?どうだったっけ?」とその場が少しずつ混乱しはじめる……。
このとき私は、情報がそこに「ある」ことと、「見えて」「使える」ことは全く別の話だと改めて実感しました。
「見えているはずなのに」見えていない現象
この状況を見て、ふと思い出したのがダニエル・カーネマン氏の『ファスト&スロー』に紹介されている「注意の限界」や「見え方の揺らぎ」に関する話でした。
人は「見えている」と思っていても、大事なものを見落としてしまうことがある。
ときには、存在しないものを見た気になることさえある──。
訓練の現場でも、まさにそうした「情報が見えているようで見えていない」現象が起きていたように思います。
混乱や焦りの中では、冷静に情報を探し読み取るのは想像以上に難しい。
現場の空気感を肌で感じながら、これは災害時にもきっと起こりうることだと感じました。
現状の情報提供手段にも限界がある
もちろん、多くの自治体で情報提供の工夫は進められています。
最近では動画マニュアルを作成し、自治体のホームページなどに掲載している例も増えてきました。こうした取り組みはとても意義のある一歩だと感じます。
一方で、災害時の現場で、自治体HPにアクセスして目的の動画を探して再生する──
それが誰にでもスムーズにできるかというと、課題はまだ残っているようにも思います。
やはり、「情報はある」ではなく「その場で迷わず使える」ことが重要ではないでしょうか。
避難所運営の現状と求められる環境づくり
避難所の開設・運営に目を向けると、運営委員会の皆さんや防災担当職員の方々に大きな負担がかかっている現実もあります。
地域によっては、運営に関わる方の人数が限られていたり、年齢層やスキルに幅があったりと、状況はさまざまです。
そのため、避難所ごとに運営品質の差が生まれやすいという課題も共通して見られるのではないでしょうか。
最近では、どの避難所でも一定の運営品質を保ち、誰もが迷わず対応できる仕組みが求められる場面が増えてきていると感じます。
その意味でも、N-HOPSのようなツールが現場の負担軽減や、運営を支える一助として活用できる場面があるのではないかと思います。
N-HOPSが支える「迷わず使える情報環境」
N-HOPSは、避難所などの現場で「その場ですぐに必要な情報にアクセスできる」仕組みを提供するソリューションです。
- QRコードやNFCタグを活用し、スマホをかざすだけで即座に必要な情報を確認可能
- 現場の行動導線に沿った設計で、誰でも直感的に操作できる
- オフラインでも利用可能な設計により、通信状況に左右されない
実際、私が訓練の現場で感じたような「情報はあるのに使われない」状況が少しでも減ることで、
特定の方に過度な負担がかからず、誰もが安心して避難所運営に関われる環境づくりにつながるのではないかと期待しています。
まとめ──「見えない」から「使える」へ
避難訓練の現場で体感した、「見えているはずのものが見えていない」現象。
災害時はさらに状況が複雑になり、情報が「ある」だけでは不十分で、
「迷わず使える」形で届けられていることが何より大切だと感じます。
日頃から防災に取り組まれている皆さんとともに、
より現場で使いやすい、安心して頼れる情報環境づくりを進めていけたらと思います。