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若年層が主役に──マニュアル整備のその先へ

これまで多くの避難所開設訓練に参加し、自治体職員の皆さまと意見を交わしてきた私が、共通して感じたことがあります。

それは、「若年層の参加が思うように進まない」という悩みが、どの地域にも存在しているという現実です。

「学生や20代の参加が少ない」
「若者に声をかけても反応がない、来ない」
「関心がないと思っていたが、話してみるとそうでもなかった」

こうした声を聞くたびに思うのは、若者の意識の問題ではなく、“伝え方や関わり方に工夫の余地があるのではないか”ということです。

今回は、「なぜ若者が訓練に参加しづらいのか」「どうすれば彼らに届くのか」、そして「どのようにすれば彼らが主役として動き出せるのか」を、防災の現場で得た実感と、Z世代に関する社会的知見をもとに考察します。

どうすれば若者は避難所運営に関わってくれるのかを、ともに悩み考える立場として、共に一歩を踏み出すためのヒントを共有できればと思います。

目次[非表示]

  1. 1.避難所開設訓練を実施していますか?
  2. 2.マニュアルの整備は終わっていますか?
  3. 3.若者の参加が少ないのは、「意識の低さ」ではなく「前提のすれ違い」かも
  4. 4.若者は受け身ではなく、効率と納得を求めている
  5. 5.N-HOPSは、若者の「主体性」を引き出す防災プラットフォーム
  6. 6.若者とつながる避難所訓練へ

避難所開設訓練を実施していますか?

総務省消防庁が発行した『地方防災行政の現況(令和5年版)』によれば、令和5年度には全国1,741市町村のうち、1,543団体(88.6%)が何らかの防災訓練を実施しています。

ただしこの数値には、避難所開設訓練以外の各種訓練(避難訓練、図上訓練、防火訓練など)も含まれており、避難所開設訓練に特化した割合は不明です。

これは、予算や人員の制約だけでなく、「若者に訓練をどう届けるか」「誰と一緒に運営するか」という、訓練の“あり方”自体に悩みがあることの裏返しとも言えます。

自治体における防災対策の柱の一つである「避難所開設訓練」。多くの自治体で、模擬訓練やロールプレイの実施が進み、実際に体を動かしながら避難所の立ち上げ手順を体得する取り組みが広がっています。

しかし、その訓練に若年層の参加はどのくらいありますか? そして、彼らにとってその訓練は“自分ごと”として届いているでしょうか?

マニュアルの整備は終わっていますか?

内閣府が令和4年1月に実施した市区町村向け調査によれば、全国の市区町村のうち83%が避難所運営マニュアルを策定済みと回答しています。

とはいえ、その内容が「地域住民に伝わっているか」「若年層にとって理解しやすい形か」という視点に立つと、まだ改善の余地が多く残されているのが実情です。

若年層が避難所開設に関わるには、マニュアルの存在だけでなく、その見せ方・届け方・使われ方が鍵になります。

「マニュアルはすでに整備済み」「備蓄やレイアウトも確認済み」という自治体も多いかもしれません。

それでもなお、若年層の参加が進まないとすれば、マニュアルの有無だけでは足りないのかもしれません。

大切なのは、その情報が誰に、どのように、どんな形で届いているかという視点です。彼らの世代にとって、どのような共有スタイルが“理解できる”“使える”と感じられるのか。そこにこそ、次の一歩の鍵があるはずです。


若者の参加が少ないのは、「意識の低さ」ではなく「前提のすれ違い」かも

防災訓練の若年層参加率が低い理由を、「関心がない」「責任感がない」と捉えていませんか? 実はその背景には、世代間で共有されている"普通"の違いがあります。

たとえば、40代〜50代の防災担当職員の多くは、「まず自分でやってみて、つまずきながら覚えるもの」「マニュアルにない部分を自分なりに補うことが成長だ」という価値観を持っています。これは、災害現場に求められる即応力や応用力を重視する立場として、非常に自然な感覚です。

一方で、Z世代(1990年代後半〜2010年前後生まれ)の若者は、異なる前提で動いています。彼らは、

  • 無駄を省き、最短で「正解」にたどり着くことを重視
  • 明文化された情報や手順を好む(動画・図解・チェックリストなど)
  • 「まずはマニュアルを読む」が前提ではなく、「マニュアル+補足で全体像を理解する」が基本

という情報環境の中で育ってきました。よって、「マニュアルを読んでおけ」→「自分でやってみろ」という放任スタイルに対しては、「不親切」「不安」と受け取られることがあります。


若者は受け身ではなく、効率と納得を求めている

Z世代は「正解をまず共有し、その先で工夫したい」と考える傾向があります。「やり方を教えてもらえれば、自分なりに工夫できる」「まず理解し、納得した上で貢献したい」というスタンスです。

これは、「指示されたことしかやらない」態度ではなく、むしろ目的と全体像が共有されていれば、効率的かつ積極的に動ける人材であることを意味します。

たとえば、彼らは災害時にSNSで情報収集し、動画でハウツーを確認し、既存のベストプラクティスを参考にしながら動くのが自然です。そのため、避難所開設訓練においても「現場で学ぶ前に、基本を共有してほしい」と感じています。

N-HOPSは、若者の「主体性」を引き出す防災プラットフォーム

もし、マニュアルの整備が終わっているなら、次の一歩を踏み出しませんか?
N-HOPSは、避難所開設に必要な手順やチェックリスト、備品情報などをクラウド上で一元管理・共有できるプラットフォームです。特に、スマホ世代の若者が直感的にアクセス・参照できるUIを備えており、事前に“正解”を共有しながら、現場での応用や工夫を支援します。

  • すべての情報がクラウドで一元管理
  • 各種手順を動画・画像・テキストでマルチに提供
  • チーム内での編集やフィードバックも可能

これにより、「見て覚えろ」から「共有して、つながって、共に創る」訓練スタイルへ転換が可能です。

若者とつながる避難所訓練へ

N-HOPSは、若年層が防災活動に参加する「きっかけ」と「安心」を提供します。

避難所運営は、地域の未来を守る行動です。Z世代の感覚を尊重し、彼らと共に次世代型の防災体制を作りましょう。

マニュアルを整備したその先に、若者と共に進める避難所訓練が待っています。  

      NHOPS|住民主体でスムーズな避難所運営を支援するWebアプリ 「NHOPS」は、住民主体の避難所運営を支援するWebアプリ。誰でも簡単に避難所の開設・運営ができる直感的なインターフェースで、現場に即した行動支援を提供します。 能美防災株式会社


    淺野 智雄
    淺野 智雄
    能美防災 総合企画室 社内ベンチャーグループ長。自治体や地域に寄り添う防災のあり方を模索し、避難所運営支援アプリ「N-HOPS」をはじめ、現場の声に応じた防災支援ツールの開発・展開に取り組んでいる。元々は品質管理の現場からキャリアをスタートし、その後は中長期ビジョンの策定や新規事業開発など、経営と現場をつなぐ活動に従事。実際の運用現場に足を運び、改善を重ねる日々を大切にしている。趣味は筋トレと読書、料理。どんな状況でも前向きでいられるよう、朝4時からのトレーニングで心身を整えるのが日課。