ビルの維持管理とBCP・レジリエンス:ICT活用システム「TASKis」の取り組み
目次[非表示]
- 1.概要
- 2.防災訓練の課題と背景
- 3.TASKisの開発背景
- 4.従来システムとの違い
- 5.「TASKis」の主な機能
- 6.成果と今後の展望
概要
企業における防災管理には多くの課題が存在しています。特に防災訓練の実施や緊急時対応マニュアルの形骸化などが挙げられます。そこで能美防災株式会社は、これらの課題を解決するための「防災支援システムTASKis」を開発しました。本記事では、このシステムの特徴や効果について詳述します。
防災訓練の課題と背景
近年、企業の防災管理はますます重要視され、あらゆる状況に対応できる体制の整備が求められています。しかし、防災訓練の実施や緊急時対応マニュアルの徹底には依然として多くの課題が存在します。
特に、防災訓練の定期的な実施には大きな労力がかかり、担当者の負担は非常に大きいです。それに加え、防災訓練への参加率も低く、訓練の効果が十分に発揮されない場合も多々あります。さらに、防災教育の機会自体が限られているため、全社員が緊急時対応マニュアルを徹底的に理解しているとは言えません。
これらの条件が揃うことで、実際に災害が発生した際には緊急時対応マニュアルが形骸化し、社員たちが適切な行動を取ることが難しくなるのです。代表的な例として、人事異動に伴い防災・安全担当者が変更されても、引継ぎが十分に行われず、ただファイルを手渡すだけになってしまうことがあります。こうした背景から、防災・安全担当者が企業の自衛消防組織機能を維持するために頭を抱えている現状が見えてきます。
TASKisの開発背景
防災・安全担当者の負担を軽減し、企業全体の防災力を向上させるために、能美防災株式会社は「防災支援システムTASKis」の開発に着手しました。このシステムの主な目的は、「防災知識が少ない人でも、緊急時に迅速かつ適切な行動をとることができる環境を実現すること」です。
「TASKis」は、火災や災害などの緊急事態が発生した際に、発生している災害の状況をスマートフォンで迅速に把握することができ、さらに、緊急時対応マニュアルに規定された行動指示を関係者のスマートフォンや携帯端末に自動配信する機能を持っています。このシステムにより、関係者はマニュアルの内容を忘れていたとしても、画面に表示される指示内容を見ながら行動することで、迅速かつ正確な行動が可能となります。
具体的には、「防災の知識・経験が少ない方でも、円滑に有事の対応に移行でき、適切な行動がとれる状況を実現させる」というコンセプトをもとに開発されました。このシステムは、火災や災害時に関係者がどのように行動すべきかをリアルタイムで指示する機能に焦点を当てています。
従来システムとの違い
従来のシステムでは、火災発生箇所をフロア図に表示するだけのCRTディスプレイシステムが主流で、防災センターに設置されることが一般的でした。しかし、このシステムにはいくつかの課題がありました。例えば、火災の箇所を早急に確認できても、実際に現場で適切な行動を取るためのガイドラインが不足しているため、緊急時には混乱してしまうことが多かったのです。
「TASKis」では、このような課題を解決するために、火災発生時の状況を各個人のスマートフォンにリアルタイムで表示し、具体的な行動指示を自動配信する機能を追加しました。これにより、マニュアルを忘れてしまっても、画面に表示される指示通りに行動するだけで、迅速かつ正確な対応が可能となります。「TASKis」によって適切な行動が取れれば、右往左往することなく、安全に避難や消火活動が行える環境が整います。
これらの機能は、従来のシステムでは対応しきれなかった「現場での実際の行動」に焦点を当てているため、より実践的で効果的な防災支援が可能となるのです。
「TASKis」の主な機能
「TASKis」は、災害時の迅速かつ正確な対応を目指すための3つの主要機能を提供します。
第一に、管理者しか把握できなかった火災箇所をスマートフォンのフロア図に表示し、複数人へ一斉に周知することが可能です。これにより、火災発生時にどこで火災が起きているかを迅速に把握し、関係者全員が詳細な情報を共有することができます。
第二に、火災や災害が発生し、混乱している状況でも、行動指示をスマートフォンに表示することで冷静な行動を促す機能があります。緊急事態では冷静な判断が難しいですが、このシステムならば関係者全員が一致した行動指示を受けることができ、混乱を避けることができます。
第三に、システム上で簡便に防災訓練を定期的に実施し、BCPマニュアルの周知徹底を図ることが可能です。この機能により、訓練の時間や場所を選ばずに防災訓練を行うことができ、多忙な担当者の負担を軽減します。また、訓練がシステム上で簡便に行えるため、参加率を高めることが期待できます。
さらに、視認性と誤操作の防止を重視して設計されており、緊急時でも直感的に操作できるインターフェースを実現しています。これにより、初めてシステムを利用する人でも簡単に操作でき、緊急時の迅速な対応が可能となります。
成果と今後の展望
実際に能美防災の本社ビルで「TASKis」を導入した結果、火災発生後の火災現場確認までの時間と、119通報連絡までの時間が短縮されるという具体的な効果が確認されました。また、画面に表示される指示内容を見ながら行動することで、慌てずに迅速かつ正確な対応を行うことができました。
これに加えて、火災現場の写真を共有する機能により、誤報と認識してしまう安全性バイアスを排除し、迅速な対応を促すことが期待されています。非常放送音だけでなく、実際の火災の様子を視覚的に確認できるため、関係者全員が真剣に対応することができます。
このように、「TASKis」は火災だけでなく地震や設備トラブルなど多岐にわたる緊急事態にも対応可能であり、防災・安全担当者の負担を軽減するための多機能なシステムです。今後もシステムのさらなる発展と導入を進め、日本全体の防災力向上に寄与していく予定です。
能美防災は、これからもハードウェアの提供と「TASKis」のサービスを通じて、安全で安心して暮らせる社会を目指し、進化を続けていきます。
まとめ
「防災支援システムTASKis」は、企業の防災訓練や緊急時対応を効率化し、防災・安全担当者の負担を軽減するために開発されました。このシステムの導入により、企業全体の防災力が向上し、緊急事態にも迅速かつ適切に対応できる環境が整います。
従来のシステムでは対応しきれなかった現場での具体的な行動指示を実現し、多くの課題を解決しました。能美防災株式会社は今後も、このシステムを進化させ、導入を広げることで、日本全体の防災力向上に寄与し、火災被害の無い安全で安心して暮らせる社会の実現に向けて歩み続けます。